機内に入り、これで完璧に籠の鳥だ。昔は、ヒコーキが大好きだったのだけれど、最近はこの狭い世界が苦痛となっている。変われば変わるものだ。これも歳のせいだろうか。とはいえ、昔と同じように興奮するのは変わらない。これでヒコーキに興奮しなくなったら、旅も、そして人生も終わりかもしれない。
今回のヒコーキは、777-200。昔のヒコーキに比べたら、空間にゆとりのある造りだ。機内のデザインもよく、エコノミーながら、座席は広くゆったりしていて快適だ。できることなら、いつもこの飛行機を指名したいくらいだ。
そんな席でくつろいでいて気がついたことがあった。めずらしく子どもや赤ちゃんの声がしないことだ。いつも決まってこの年代のおガキ様がいるのだけれど、そんな気配ゼロ。いたって平和な環境だ。これは、最後尾2列目という席のせいなのだろうか。もしそうなら、これからずっとこの辺の席がよさそうだ。あっ、おガキ様の存在を否定しているわけではないですからね。まあ、できることならってレベルの話であります。
予定通り飛行機は動きだす。しばらく滑走路をゴロゴロと音を立てて動いて、ストップ。そして、いよいよスピードをあげて助走し、やがてグィーンと機体を持ち上げる。この車輪が地面から離れる瞬間が大好きだ。これですべてから解き放たれたと思えるからだ。サラリーマン時代には、会社から解放されたと実感できたけれど、リタイヤした今も、この瞬間は心ときめく。これはどこからの解放となるのだろう。日本か、社会か、銀行か、スーパーか、経済か、あるいは妻だろうか……(アブナイ、アブナイ)。