10時5分
バスはニミッツ・ハイウェイのバス停で止まった。まだ空港の近くで、以前、モアナルア・SCに向かったときに歩いたことがある場所だった。バス停だから止まるのは当たり前だけど、なぜか運転手が席から離れた。
ハワイでよくある、おトイレ・タイムか。しかしこの辺に、そんなものはなかったはずだけれど。となると、運転手の交代か……なんか変だ。
運転手は席を立つと、なんだかブツブツいいながらうしろのほうに歩いて行く。わからないながらも、その言葉をよく聞くと、どうやらここでバスは止まるらしい。エンジントラブルだろうか。初めてのハワイひとり旅の時もそうだったことを思い出した。あの時は、ワイキキの〈ジャック・イン・ザ・ボックス〉横だった。
運転手が行く先に目をやると、なんと男性が床に倒れていた。おやまあ、いつからこんな状態だったのだろう。叫び声も聞こえなかったし、倒れる音もしなかった。
よく見ると、どうやら酔っ払いのようだ。これが原因でバスが止まってしまったらしい。そんな彼を運転手は介抱するわけでもなく、みんなにバスから降りるよう指示を始めた。
バスを降りる際、運転手に、このバス停に40番か42番が来るのか聞くと、「来る」という。よかった。僕が行くワイマル・SCは、40番か42番に乗り換える必要があったのだ。ラッキーと思うことにした。
パチパチ君を見ると、まだ座っている。声をかけようか迷いながらも、彼を置き去りにしてバスを降りてしまった。疲れていたのか、こちらから声をかけるのが面倒になっていた。なんか変な体調。
降りてしばらくすると、パチパチ君も降りてきた。状況をわかってくれてよかった。運転手も降りて来て、僕の横に立った。そして、僕になんだか一生懸命話しかけてくるけれど、なにをいっているのか、ほとんどわからない。彼、なぜか、僕になついてくる。適当に相づちを打っておくと、うれしそうだったので、それでよしとした。こんなことから悲劇が生まれることもあるらしいけど、今回は大丈夫そうだし。