バス停の先住者は、こちらが英語がわかると思ったのか、沢山話しかけてくる。申し訳ないので、早めに、英語はさほど話せないことを宣言したけれど、それでも構わないらしい。次の質問は、韓国人か日本人かときた。大昔のルーツは同じ方面だろうから、どちらでもいいのだけれど、一応、現在のほうを答えておいた。
面倒な所に座っちまったなぁ、と後悔しながらも、わけのわからない英語に、適当に相づちを打ち、なんとかわかる単語が出てくるのを心待ちにして聞いていた。そんななか、わかったのは、彼は80歳台だということ。
なんと! 僕には、70歳台かと聞いてきた。ちがわ~い、60台だ~い。張り倒してやたいほどだったが、まっ、50台の時に間違われたわけではないから、許すことにした。しかし、大きなショック。彼、きっと目がわるいのだ。ということになった。
彼は、買い物帰りとのことで、バッグを開けてまで、パパイヤ、ジャガイモ、リンゴが入っているのを見せてくれた。買ったのは、どうやらこの近辺にある、コリアン・スーパーらしい。そこは、安いのだけれど、なんでも安いわけではないらしい。もっともだ。
近くの〈ドンキ〉でないことが不思議だった。もしかしたら、〈ドンキ〉より魅力的なお店なのかもしれない。となると、これは、貴重な情報だ。
見せていただいたものに感心していると、自分はビーフは食べないことを伝えてきた。ほう、ベジタリアンかい、と聞くと。チキンと魚は食べるから、ベジタリアンではないらしい。さらに、フルーツをよく摂るという食生活まで教えてくれた。そんなことまで知りたくないや~い。
もう60年ハワイにいるそうだ。生まれを聞くと、○○という、バーボンで有名な町らしい。○○は、聞き取れなかったので、わからない。ただ、バーボンは飲まないらしく、飲むのは、ワインやシャンパンらしい。金、持ってるぞ、という方面のようだ。こうして知らなくてもいい情報ばかり増えていく。さらには、スイミング・ジムに通っていることも知ってしまった。
話していると、彼は、突然、日本語を少ししゃべった。不思議だから、そのわけを聞こうとしたところで、左のほうから、沢山ものを乗せたカートを押してくるおばさんが現れた。一瞬、すごい買い物をしてきた人に見えてしまいそうだったけれど、ホームレスさんだ。やはりこの辺は、そんな地区でもあるようだ。
彼も同じように、おばさんを見つめ、「これで2回目だ。すごい運動量だ」とつぶやいた。確かに、荷物いっぱいのカートを押すことは、たいへんそうだ。ハワイのつらい光景のひとつだ。