ビーチは太陽の光でいっぱいだ。朝の沢山の黒や白の雲は、今は、晴れ間を作ってくれている。太陽の光のないサンスーシーは、その本来の姿じゃない。太陽あっての海。だから、今は美しさでいっぱいだ。
そんな海をただ見ているだけで、幸せだった。そう、たった今、過去形になってしまった。なぜなら、結婚写真を撮るカップルが現れたからだ。アジア系のふたり、日本人だろうなぁ~。
なぜ、こんな所で写真を撮るのだろう。以前は、それでもかわいいなと思って見ていた。ベンチの横を通るふたりに、「お幸せに」なんて言葉をかけたこともあった。でも、正直に告白してしまえ、もはや違う。じゃまだ。みんながビーチを楽しんでいるのに、ウェディング・ドレスなんか着て写真を撮ってる姿は場違いだ。よくこんなことできるな、とすら思えてしまう……。
そんなふたりの横に、さらにもうひと組のカップルが現れ、写真を撮り始めた。当然、腹立たしさ、ダブルとなる。
さて、お互いどういう心境だろう。僕だったら、心中穏やかでないだろうな。負けたとか、勝ったとか問題に発展しそうな気もする。
お互いに己の姿を見ているようで、恥ずかしくないのか。いや、きっとそんな気持ちなんかないから、こんな所で写真が撮れるのだろう。見ているこっちのほうが恥ずかしい。もっと違う場所で、ふたりだけの時間を使えばいいのになぁ。と、おじさんは思うのでありました。写真は、こっちのベンチで並んで撮ったほうが、もっと素敵な気がするのだけれど、どうなんでしょうねぇ。