ジョージ(前日参照)は、いつもここのベンチに座って、新聞を読んでいた。時々、ベンチ周りのゴミをトンクで拾っているのを見たことがある。彼を見ているだけで、自分もああなりたいと思わせる姿だった。僕とは違う、人格者のオーラが出ているのだ。
彼のトートバックには、フルブライトの文字。ということは、教育関係の人物かもしれない。でも、もしかすると、僕みたいに〈グッドウィル〉で買ったということもありえるな。ならば、さらに尊敬に値する、ということになる。
彼のすごいところは、静かに新聞を読んでいるのだけれど、いつの間にか取り巻き連が集まってしまうことだ。彼を中心に輪が広がる。広がっても、彼は、そのなかで静かに聞いていることが多い。一度だけ、彼が激しく語っていることを目にしたことがある。その時、1回だけだった。いったい何の話だったのだろう。
そんな彼に何度話しかけようと思ったことか。取り巻きが多く、ひとりきりということがほとんどないのだけれど、そんなチャンスが数回あった。でも、いざ行くとなると、遠くで見ていたほうがいいと思ってしまった。やはり……、話しておけばよかった。 ここに来る度に、きっと彼を探していることだろう。