今回の僕の荷物は、36㍑のリュックだけ。でもこれだけで帰るのは不可能だ。これに少なくとも、旅行鞄がひとつ必要だ。それがあれば、あらゆるものを気兼ねなく日本に持ち帰れる。そんなことを、今頃、理解することになった。
空港から即活動したいという目的のもと旅を続ける内に、いつの間にか、旅の荷物は極力少なくしようという方向に進んできた。少ない日程を有効に使うには、着いた日に空港に近い目的地からつぶしていくのが、とても合理的な方法だったからだ。それは、1日、得したように思えた。
そして、少ない荷物で旅行をすることは、僕のあこがれでもあった。リュックひとつで旅行する人を見ると、いつも格好よく見えたのだ。
しかし、そんなことまでして、初日、空港から動く必要はあるのだろうか。サラリーマン時代の日数に制限のある旅行ならまだしも、いや、それだって、そこまでして初日を使用する必要はあるのか。疑問が、ようやくわいてきた。
今や、そこまでタイトな日程にする必要などない身分になっている。無理に小さなバッグで旅することなんかないのだ。ゆったりなんでも持ち帰れること、これが精神衛生上とてもいい。こんなことを、今頃実感している。でも、このときは、違っていた。まだそんな悟りの境地になっていなかった。