旅のメモもつけ終わり、トイレに行ってから店を出ることにした。
昔、トイレには、大きなキーホルダーの付いたカギがあったけれど、今はない。キーホルダーといっても、小さなものでなく、(何が付いていたか忘れてしまったが)小さなカギに大きなしゃもじが付いているような、そんなアンバランスなものだった。持ち歩くというより、目立てばいい存在。そんなものを初めて見たときは、驚きとともに、妙にに感心させられた。
トイレのなかに入って驚いたのは、見事に装飾されていたことだ。お店のコンセプトがあふれているといってもいいくらいの、装飾だった。ちょっと店内より派手な感じもするけれど、そこは〈コーヒー・トーク〉、なんだかたまらなく居心地いい。なんなら、ここでコーヒーを飲んでもいいくらいだ(ちと脚色)。
トイレから出て、席に戻ると、バッグの口が開いたままで、財布も丸見えだった。盗難にあったわけじゃない。自分でそんな状態にしてトイレに行っていたのだ。なんて不用心だったことか。幸い、この店は、そんな愚かな行為も許された。
ゆったりとした空気に包まれた〈コーヒー・トーク〉。どうか、ずっとこのままでありますように。