アラワイ運河を通過して、間延びした顔でレアヒ通りを歩く。ホームレスさんがいる一画は、前よりちょっとよくなったかもしれない。しかし、人影はないけれど、気配を感じてしまうのはなぜだろう。公園や人が通らない場所は、いつの間にか彼らのホームタウンと化していく。いろんな深い事情があってのことだけろうけれど、目にするのがつらい。
先まで進み、なんか変だなと気がついた。
何かとは・・・レアヒ通りの途中に、いつも気になる家があるのだけれど、それに気づかないで歩いていたのだ。たしかあそこに・・・と思う場所にはきれいな新しい家が建っていた。場所を間違えているのかと、周りを見ても、それらしき家はない。ということは、やはりこの新しい家だ。どうやら僕がハワイを留守にしているあいだに、新しい家になってしまったようだ。
ここにあった古い家は、最初のひとり旅から、気になる家だった。この辺には、ほかにも素敵な家は、沢山あるのだけれど、なぜかここが一番気になっていた。きれいというよりは古くて雑然。メルヘンチックというより古い定食屋さん。その雑然さに、なぜか安心感を覚える家だった。
家の前を通ると、いつもラジオの音が小さく聞こえてきた。たまに、おじさんが庭の椅子で新聞を読んでいたりする。あるとき目が合ってしまい、「こりゃ困ったぞ」と照れ笑いしていたら、笑って手を振ってくれた。まさに家の主は、家の姿と同じようにあたたかな人物だった。
新しい家からは、ラジオの音は聞こえない。おじさんの姿もない。世代交代だろうか。あるいは、持ち主が変わってしまったのだろうか。お店の閉店だけでなく、こんな所にも時は流れているようだ。