なにを頼むか決まっているのだけれど、持ってきてくれたメニューを一応見る。
日替わりもあって、今日は、ショートリブ、14.95ドル。Tripe Stew、8.95ドル。Tripeってなんだろう。辞書を引くと、「牛の胃」と出てくる。内蔵料理だろうか、ちょっとおもしろそうだ。いや、迷ってはいけない、初志貫徹。オックステールだ。
次に、オックステールの大にするか、小にするかで悩んだ。お腹は、空いているのだけれど、時差のせいか、さほど食欲がわかない……、小に決定。値段は12.95ドル。となると、チップは……、2ドル。と、すぐにチップのことが頭に浮かんでくる。これからまたチップ生活が始まると思うと、気が重い。でも、チップを払うような所に行くのだろうか。
テーブルに座ると、なんだか変な気持ちになった。この気持ちのわるさはなんだろう。以前にも体験したような……、思い出した。ここのテーブル高さは日本人にはとても高いのだ。まるで子どもがテーブルについたような有様だ。背が高い僕(178㎝)でも、そう感じるのだから、これは相当だ。これを相手に食事をするのだと思うと、つらいものがある。お尻の下になにか敷きたい。
オーダーをしておいて、トイレに行った。ハワイでは、トイレは、「見つけた時には、入っておく」が旅の鉄則だ。出たくなくても行く。ハワイのトイレ事情、どこの国でもそうかもしれないけれど、結構たいへん。
戻ると、テーブルには、もうオックステールが届いていた。なんて早いのだろう。まっ、煮込んであるのを、どんぶりに入れるだけのことだから、さもありなんか。
水面一体にパクチーの山。もしパクチーが大嫌いだったら、即逃げ出すような姿だ。沢山のパクチーをよけて(食べられるようになったけれど、さほど好きじゃない)、まずはスープ。おいしい。シッポのお肉は、まるでコンビーフのように柔らかく、とろけるようだ。
でも…おいしいけれど、どうしても、今はなき〈ビクトリア・イン〉のほうがよかったように思えてならない。あれは、初めてのオックステール・スープだったからだろうか。いや、絶対にあっちのほうがうまかった。それを確認できないのがつらい。
なんであんないい店がなくなってしまうのだろう。そこが最近嫌いなハワイの姿だ。後継者がいない、という理由もあるのだろうけれど、家賃の高騰で店を続けられないという話も多く聞く。
〈ビクトリア・イン〉の閉店の理由(後継者問題と聞くけれど)はわからないけれど、なくなっては困る店のひとつだった。そして、あとに残るのは寂しさばかり。時代が変わっているのだ、と思えなくもないけど、そうじゃないといえなくもない。そんな変な表現のように、気持ちは複雑。
11時10分
税込み13.55ドルを支払って店を出た。一生懸命食べたけれど、結局、付いてきたライスには手をつけないで終わった。オックステール・スープだけで満腹。さあ、これで元気回復、次は楽しい〈グッドウィル〉。